総入れ歯をお使いの方など、特に多くの歯を失っている場合にインプラントの治療を受けると、以前は失った歯の数だけインプラントを埋め込む必要がありました。そのため患者様の肉体的負担が大きく、治療期間や治療費がかかっていました。
『All-on-4』(オールオンフォー)は、片顎(上顎または下顎)に4本のインプラントを埋め込み、それだけで固定式の人工歯を支えられる治療法です。
奥歯部分は左右1本ずつ斜めに、前歯部分には2本、計4本のインプラントを埋め込むことで均等に力がかかり、最大12本分が連結した人工歯を支えられます。また、手術当日に人工歯を装着でき、治療期間の短縮や治療費の抑制ができるため、患者様にとってそれほど大きな負担にはなりません。
メリット
- 埋め込むインプラントが4本だけなので、治療費を抑えられる
- 埋め込むインプラントが4本だけなので、手術時間が短く、腫れや痛みなどが出にくい
- 骨が多い前歯部分にインプラントを埋め込むので、骨造成せずにすむ可能性が高い
- 手術当日に人工歯を装着できるので、食事や会話に支障がない
デメリット
- 天然歯のない顎に装着するので、健康な歯でも抜歯する必要がある
- 症状や全身の健康状態により、治療を受けられない場合がある
サージカルガイド
インプラントを埋め込むときはドリリング(ドリルで顎の骨に穴をあけること)が必要です。しかしこれはインプラントの治療において失敗の可能性が高いとされており、ここがきちんとできていないとインプラントを安全に埋め込むことはできません。
『サージカルガイド』は、ドリルがぶれないようにし、ドリルの角度と着地点を適切な方向に導けるようにするマウスピースのような器具です。これを使うことによりドリリングの失敗を防げます。また、歯肉の切開が最小限ですむので、手術後の腫れや痛みなど患者様の肉体的負担が小さくなります。サージカルガイドを使うことにより、切開を最小限に抑えられ、安心・安全な治療を行なえます。
フラップレスオペ
インプラントの治療には、歯肉を切開する外科手術が必要なため、患者様の肉体的負担が大きくなってしまいます。しかし最近では患者様の肉体的負担を小さくできる『フラップレスオペ』が行なわれています。
フラップとは、インプラントを埋め込むときに切開する歯肉の部分のことです。フラップレスオペは、通常のインプラントの手術とは異なり、歯肉の切開をせず、パンチのような器具で歯肉に穴を開け、そこからインプラントを埋め込む手術です。
まず、手術前にCT撮影(コンピューター断層撮影)を行ない、コンピューターシミュレーションによりインプラントを埋め込むのに適切な位置を把握します。次に、インプラントを埋め込むためのテンプレートを作製します。それを装着することで歯肉を切開することなく手術を行なえます。そのため、腫れや痛みが少なく、手術時間や治療期間が短縮され、患者様の負担を小さくできます。
メリット
- メスを使わないので、歯肉を切開する必要がなく、傷が早く治る
- 出血量が少ないので、手術後の腫れや痛みが少ない
- 歯肉を切開する必要がないので、手術時間や治療期間を短縮できる
- 全身疾患をお持ちの方でも治療を受けられる
デメリット
- 顎の骨を目で見ず歯肉からインプラトを埋め込むので、歯科医師の技術と経験が必要になる
- インプラントを埋め込む方向によっては神経や血管を傷つける可能性があるので、歯科医師の技術と経験が必要になる
- 顎の骨が少ないとインプラントを適切な角度や方向で埋め込めないので、骨が十分足りている必要がある
静脈内鎮静法
歯科治療を受けるのが苦手という方はたくさんいらっしゃいます。痛みはもちろん、歯を削る音・振動、注射、薬剤のにおいなどさまざまなものが不安や恐怖の原因となるため、痛みなどの異変を感じても、歯科医院に行きたくないという方も珍しくありません。しかしそれが症状を悪化させ、最終的に治療期間や治療費がかかってしまうという結果につながります。そのような状況にならないためにも、不安や恐怖を感じることなく治療を受けられるのが望ましいといえます。そこでお勧めなのが『静脈内鎮静法』です。
静脈内鎮静法は、向精神薬や鎮痛薬を組み合わせて点滴で静脈内に投与し、治療への不安や恐怖を和らげ、リラックスして治療を受けていただくための方法です。薬剤を投与すると1~3分ほどで眠くなり、うとうととリラックスした状態になります。全身麻酔ではなく、また鎮痛作用も弱いので、痛みを伴う治療には局所麻酔を行ないますが、健忘効果があるため治療中のことはほとんど覚えていません。しかし、意識はあるので、治療中の指示や問いかけには反応でき、防御反応(体本来の免疫力を高める作用)が保たれているので安全です。不安感や恐怖心が強い方だけでなく、嘔吐反射が強い方や高血圧症などをお持ちの方にもお勧めです。
静脈内鎮静法を用いるときは、治療開始前に血圧や心電図などのモニターをつけていただき、歯科麻酔学会認定医のもとで全身の状態を管理します。薬剤を投与し、リラックスした状態になってから治療を開始します。
治療終了後は多少ふらつくことがあるので、通常の状態に戻るのを1~2時間ほどお待ちいただき、その後お帰りいただきます。治療当日は、自動車、バイク、自転車などでのご来院はお控えください。
なお、全身の健康状態によっては静脈内鎮静法を適用できないことがあるので、ご了承ください。