10年以上にわたって総義歯を使用し続けた場合、顎骨が急速に萎縮してくることはよく知られています。
極端に顎骨が萎縮したケースでは、総義歯の装着のみならず製作すら困難になる場合も多く、義歯を装着していない時は顔貌の萎縮も著しくなります。このような症例では、インプラントの施術を行おうとしても難症例になることが多いのです。
アメリカの遺伝子工学により開発されたBMP-Xは、現在広くアメリカ全土に普及しており、インプラントの難症例に大きな効果を発揮しています。
当院の具体的な症例として、他院において上下総義歯を12年前から使用しながらその間に数回義歯を作り直し、上下総義歯が非常に不安定で咀嚼(そしゃく)不能の状態であった患者さんの場合では、初診口腔内診査時には上下顎骨の高度萎縮が認められ、広範囲で大量の骨造成の必要性が予想されました。
CT撮影分析では、インプラントが埋入すべき下顎前方部の骨の高さは6.8〜8.7_、左右上顎の奥歯部分の骨厚さは1.3〜5.7_でした。実際、しっかり永く持たせるためのインプラントのサイズは、ストレートタイプ(円筒形)の場合で直径3.5_、長さ9.5_以上が必要で、安全安心でしっかりブリッジを維持させるための本数は、下顎で6本以上、上顎で8本以上必要となります。
上下顎ともかなり骨が萎縮し、骨量が不足していたこの症例でインプラントを埋入させるには、広範囲で大量の骨造成が必要なため、BMP-Xの使用がより効果的であることを患者さんに説明し、了解を得ました。
まず、下顎前方にインプラント6本埋入し、骨表面上に約4_露出していたインプラントの周囲にBMP-Xを大量に巻き付け、骨造成を行いました。上顎の左右奥歯の骨造成にもBMP-Xを使用しました。その後、骨ができたところで下顎のインプラントに仮ブリッジを装着。同時に8本インプラントを埋入し、当日に上顎にも仮ブリッジを装着しました。
この上下仮ブリッジでその日から食事ができるようになり、数ヵ月後には上下のオールセラミックブリッジを装着して何でも咬めるようになりました。もちろん、審美的にも口元の自然観を回復しました。
この症例ではBMP-Xを使う事で大量の骨を造ることが可能となりました。
■2012/01/01