このコラムで何度も取り上げてきたテーマが、歯周病の治療とその予防法です。多くの歯科医院で、歯周病予防に効果があるとしてグルコン酸クロルヘキシジンという薬剤が用いられますが、日本で流通している商品の濃度では、プラークの蓄積を防ぐ予防効果があっても、細菌の活性を抑える効果はないと言われています。歯周病治療に、薬剤の効果を期待してはいけません。大事なことは、歯周病を治療の理解を深めることです。
歯周病は、基本的に歯ブラシをしっかりと行えば予防できます。口腔内にプラークが蓄積した場合、何もしなければ一週間程度で細菌叢ができ、歯周病の原因となるグラム陰性菌が形成されます。初期段階では、歯肉に炎症が起きて出血するようになる『歯肉炎』と呼ばれる状態になりますが、ここでプラークを完全に除去すれば、歯周炎まで発展せずに歯周病が治癒することは以前から証明されています。
歯周病はポルフィロモナスジンジバリス菌を代表とするグラム陰性菌です。口腔内には多くの常在菌が存在し、歯周病の原因となっています。これらの歯周病菌すべてに効果がある薬剤は存在しないので、歯ブラシによって細菌を除去するという方法が一番効果的だと言えます。
歯肉炎の状態であれば、特別な治療や薬剤は必要なく、歯ブラシ1本で歯周病を治癒することができるのです。最近発表された調査によると、4mm以上の歯周ポケットがある人の割合は、高齢になるほど増加し、すべての年代で高い値を示しています。
歯肉出血がある人の割合は、15歳以上の年齢層で30%を超え、30歳以上55歳未満では40%を超えることが報告され、昔と比較しても改善は進んでいません。一方で、20本以上の歯を有する人の割合は、過去に比べて多く、歯を大事にする人が増え、歯の残存数は以前より多くなっているというデータが示されています。
ここから想像できることは、残存歯数は増加していても、歯肉炎を有する歯の総数は減っていないのではないかということです。インプラント治療においても同じことが予想されますので、当院では歯ブラシによるセルフケアが最も重要だと考えています。
■2021/01/29