先月のコラムでもお伝えいたしましたが、歯周病は基本的に歯ブラシをしっかりと行えば予防できます。初期の『歯肉炎』の状態でもプラークを完全に除去できれば、歯周病の進行を防げますが、除去できずに歯肉炎から発展すると、歯の周囲にある歯根膜の付着のレベルが低下し、歯槽骨まで影響が及んで『歯周炎』の状態になってしまいます。
探針測定の結果で6mm以上のポケットが存在し、出血するようであれば歯周炎が疑われ、歯根の表面にバイオフィルムや歯石が形成されるようになります。こうなると、歯を支えている組織の慢性炎症性疾患になり、特定の細菌種が多量に存在するようになるのです。
多数の細菌から構成されたバイオフィルムの細菌叢で、慢性歯周炎患者に多く存在する細菌は、グラム陰性嫌気性菌で、この菌の中でも特にポルフィロモナス・ジンジバリスは、歯周疾患発症の重要な病原菌だと考えられています。
ポルフィロモナス・ジンジバリスが原因で歯周炎になった場合、抗生物質や消毒薬の使用に関係なく、根面からバイオフィルムや歯石などの微生物が含まれた沈着物を機械的に除去する方法をとらなければなりません。
この方法は、SRP(スケーリングルートプレーニング)と言われ、標準的な治療法になっていますが、文献によれば過去10年間、SRPと併せて様々な薬剤を歯肉縁下で使用する方法が行われてきました。
薬剤を使用する場合は、人体に影響が少ないことが特に重要です。
海外では、0.1%のクロルヘキシジンが効果のある薬剤として使用されていますが、副作用の問題とともに歯周ポケットが深い場合には効果がないことが示唆されています。
近年では、海外の著名な大学のレポートにおいて、次亜塩素酸ナトリウム製剤(NaOClゲル)が、歯周炎の原因であるグラム陰性菌に対して殺菌作用があると報告され、歯周炎の機械的治療の補助として化学的治療の選択肢となることも期待されています。
■2021/02/26