どのメーカーのインプラントを使用するかの大きな決め手は、その外部形態、つまり外側の形が骨に埋入した時、動くことなくしっかり固定しやすい形であることが大事です。
私たちがよく使う言葉に「埋入トルク」というのがありますが、トルクとは力の大きさのことでニュートンセンチメートルという単位で表します。
インプラントを過大な力、極端にいえば80ニュートンセンチメートルで骨の中にねじ込んでいくと、接触している骨が強い力で締め付けられてインプラントに接触する骨表面の血管がつぶれてしまいます。するとインプラント周囲に新鮮な血流がなくなり、インプラントの骨結合が阻害されたり感染しやすくなったりするのです。従って、通常のインプラント埋入において適正な埋入トルクは、25〜35ニュートンセンチメートルと言われています。しかし適正なトルクで埋入しても、骨が極端に柔らかく骨の中でしっかり固定されない「一次固定が悪い状態」では骨と結合しないことがあります。そのような柔らかい骨には、尖端が細く徐々に太くなって骨を圧縮しながら入ってゆく形態のルートフォーム(根の形)インプラントや、スレッドと言われるネジ山が鋭く骨にしっかり食い込む形のインプラントが使いやすいのです。
また、極端に太く長くなくても、標準の長さや太さで咬む力を支える能力(咬合支持能力)が高いインプラントの形としては、全体の形がストレート(外形が平行)のものが一番です。
その他、インプラントにはセラミック冠を被せるためにアッバットメントという土台を接続します。インプラントのカラー(襟)部分をプラットホームといい、そこに接続されるアバットメントの直径がプラットホームより細いものはプラットホームスィッチングあるいはプラットホームシフティングと言われます。ほとんどのインプラントはプラットホームとアバットメントの直径がぴったり同じで、その接合部に近接した周囲の骨は装着後1年経過で約1.5ミリメートル吸収して高さが低くなり、その後吸収は少なくなります。それに対してプラットホームスィッチングの状態のインプラントは、セラミック装着1年後も骨吸収は0.6ミリメートルほどで済みます。
インプラントを長く使うためにも骨は少しでも温存したいので、セラミック冠装着時に接続するアバットメントの接続状態は、プラットホームスィッチング形式のものが最近は好まれています。イタリアトップのインプラントメーカーには、このような有利な形態を備えたインプラントがすべて揃っていて非常に便利です。
■2013/10/31