アメリカのドクター、サラマ兄弟たちが2001年から提唱している「ワンアバットメント/ワンタイム」という言葉があります。
アバットメントとは、インプラントに接続する土台のことで、この上にセラミック冠を装着することになります。
ドクター・サラマたちは、その当時から特に前歯のように審美的な仕上がりが求められる部位において、骨を増加させる必要のない抜歯と同時のケースでも、周囲の骨格がしっかりして充分に骨があるタイプ1の症例では抜歯と同時にインプラントを埋入。その時、インプラントの骨格が良好ならセラミック冠の最終的な土台をインプラントに装着し、さらに仮のプラスティック冠も装着していました。
この時のインプラントは、当時からCT画像でシミュレーションされ、強固な一次固定ができるインプラントと、太さ長さが選択されていました。また、最終セラミック冠の装着に使うアバットメントも、技工のテクニシャンによって修正の必要が全くない状態に計算され加工仕上げされた完成品が、口腔内にしっかり装着されていました。
こうして手術時に装着されたアバットメントは、その後インプラントと一体化した状態で外されることなく使い続けられていたそうです。
通常インプラントは、歯肉下で骨と結合するまでヒーリングキャップで封じ、骨を結合した時期に麻酔下で頭出しした後にヒーリングアバットメントに置き換えられます。その後、歯肉が回復し安定したらインプレッションコーピング(型どり部品)を付けてセラミック冠の型を取り、最終的にアバットメントを装着し、その上にセラミック冠を装着する手順となります。
歯肉の接合上皮は、このように何回も金属部品に接着されては剥がされることによって、損傷を受けます。そのため歯肉の成長や健康が阻害され、歯肉退縮つまり歯肉が下がってしまい、審美傷害を受ける原因につながります。
できればインプラントには、アバットメントを1回だけ装着したら外さないワンアバットメント・ワンタイム・テクニックを行うことが、歯肉の健康を守るだけでなく、インプラント治療に良い結果を生みます。この考え方が「ワンアバットメント/ワンタイム」のコンセプトなのです。
■2014/10/30