インプラント上部に装着する冠は、5年ほど前まで金属のキャップにセラミックを焼き付けたもので、メタルセラミッククラウンとかメタルボンドと呼ばれる見た目には被せているのか分からない冠が主流でした。
天然歯の場合は歯根周囲にある歯根膜がクッションの役目を果たすので、衝撃があっても簡単に歯が欠けたり割れたりしませんが、インプラントは骨としっかり結合するのでクッションが全くなくなり、上部にメタルセラミッククラウンを装着すると欠けたり割れたりすることがありました。 そのため、近年では高強度オールセラミックが歯科材料に使われるようになってきたのです。
一つはE−maxと言われる曲げ強度が400Mpa(メガパスカル)の高強度ガラスセラミックで、削合調整するときもかなり硬く感じます。それ以前のメタルセラミッククラウンは70〜120メガパスカルで、約4倍の曲げ強度があるE−maxは丈夫で欠けや割れがかなり少なく、透明感があるので自然感も高い良い材料です。製作法としては特殊な電気炉でE−maxを溶かしてプレス(鋳込む)して作ってあります。
もう一つは、曲げ強度1200メガパスカルのジルコニアです。金槌で叩いても欠けたり割れたりしない最高強度で、スペースシャトルの耐熱タイルやF1レースカーのブレーキパッドにも使用されています。
メタルセラミッククラウンのメタルコーピング(金属キャップ)は、金属を鋳造して造るため理論上の最高精度は60ミクロンと言われていますが、ジルコニアの製作はCAD/CAMマシンや手動パンタグラフマシンで作られ、特に現在のCAD/CAMマシンの適合精度は20ミクロンになっています。さらに来年更新される当院の併設技工所のシステムでは、最新のマシン適合精度が15ミクロンに上がります。
また、最高の強度を持ち適合精度も高く申し分ない材料のジルコニアも、単独では透明感がない点と接着剤との相性がやや悪い点がありますが、最近では少し透明感があるジルコニアも出ており、理想の材料に近づき始めています。
■2013/12/26