インプラント治療材料として、コラーゲン膜は大変よく利用されます。
インプラントに使用される膜は「骨補填材が散らばらないように保持する」「骨補填材を外側の歯肉組織などから遮断する」「骨を造りたい部分の空間を維持する(スペースメイキング)」などの機能を持っています。
ドイツ製のmダーム(仮称)は、3Dコラーゲンマトリックスと言われる物で6〜12ヶ月で吸収されます。3Dと名前が付くようにハイテクの立体構造を持ち、入れられた後は将来の歯肉の厚みとなります。
mダームの厚さは1.2〜1.7ミリメートルで、使用する時は歯肉で必ず被覆します。希望どおりの形にカットできるだけでなく、ドライ状態のままでもウエットの状態にしても同じ厚さです。歯肉の下に設置すれば、3週間後マトリックスに血管が侵入し、細胞や歯肉芽細胞も侵入していき、6〜12ケ月後には完全な歯肉組織となると言う独特な「歯肉の厚さ増大機能」もあります。
また、歯の周囲の歯肉が下がった時に改善する「歯肉の歯面歯根被覆機能」もありますが、この場合に限ってはmダームを口腔内に一部露出することができます。さらには「マトリックス内面への骨芽細胞(骨を造る芽になる細胞)の誘導機能」があり、骨造成の促進が行われます。
これらの有効な機能が、歯周病などの感染によって骨にできた穴や骨壁の欠損を遮断し補填材とともに骨造成の目的で使用したり、上顎洞という副鼻腔(鼻腔と交通して隣にある空洞)の骨造成を行う時に上顎洞粘膜を保護する目的で使用したり、骨誘導する目的で抜歯窩(歯を抜いた後のくぼみ)をmダームだけでカバーしたり、セラミック冠装着の際に歯肉の厚みを増大したり歯肉を長く延ばしたりする審美目的に使用したりと、幅広い利用法をたくさん生み出しているのです。
mダームは、骨の上に設置すると血液を吸収し、骨面への接着性が高まって辺縁を密着封鎖できます。非常に厳しいヨーロッパの規制基準をクリアして、原材料には安全な豚コラーゲンを使用することで、現在ヨーロッパはもちろん世界中に急速な広まりを見せています。
古くからの材料が必ずしも良くないということではありませんが、新しい材料には新しい機能が備わっていますから、これからも患者さんのために積極的に利用していきたいと思っています。
■2014/06/26